審美的歯科矯正法-舌側矯正臨床基本テクニック-
 
主訴
 
年齢・性別   21歳7か月(初診時),女性
主訴:   上顎前歯の叢生および前突感.
顔貌所見:   上下唇の前突感あり.E−ラインに対して下唇は+6.0mm.
口腔内所見:   上顎前歯の叢生および唇側傾斜.オーバージェットは+1 0 . 0 m m , オーバーバイトは+1.0mm.下顎3incisors.
セファロ所見:   上下顎の前後的位置関係は正常であるが,上顎前歯部の唇側傾斜が強い.ややDolico-facialtypeの傾向を示す.
全身症状:   とくに顎関節に関する自覚症状は認められないが,頭痛および首,肩などに疼痛が常時認められる.
既往症:   神経性胃炎の既往症がある.
 
 
治療方針
本症例においては,治療期間の短縮と装置の審美性に対して患者の強い要望があり,舌側装置(審美的矯正装置)装着後,促進矯正法としてコルチコトミーを行うことにした.基本方針は上顎第一小臼歯の抜歯で,上顎前歯部のコルチコトミー施術と同時に抜歯を行った.
   
促進矯正法(コルチコトミー)治療経過および術式
 
パナデントシステムのAxia-path Protractorを用いて顆頭運動を記録し, 異常の有無を診断する.
中心位で咬合器にマウントし,セットアップモデルを製作する(図12-12 )
.このセットアップモデルを基準として, ブラケットの位置を決定し,コアー・システムを用いて装置装着を行う.
手術は次の術式に基づいて行う.
局所麻酔. 切開. 歯肉弁剥離. 皮質骨切除.
麻酔は施術部位の局所麻酔で十分であるが,静脈内鎮痛剤を投与する場合もある.
歯頸部に沿って切開線を入れる. 歯肉弁離は歯牙の唇側,舌側両面の皮質骨が完全に 露出するように行う.
皮質骨の切除は,十分洗浄しながら,ラウンドバーおよびハイスピード・フィッシャーバーを用いて行う.
皮質骨の垂直方向の切除は歯肉骨頂(Alvelor Crest)から2〜3mmのところから根尖相当部に達するまで行う.
 
皮質骨切除の溝. 連続縫合. 歯肉弁圧迫保持.  
切除の深さは海綿状骨に達すればよい.水平方向の切除は根尖相当部の上2〜3mmのところで 行い, 垂直切除と連結させる.このように,歯牙周囲の皮質骨を切除することによって,歯牙移動に対する抵抗が著しく減少する.切開後は,歯肉弁は連続縫合(Continuous Matress Suture)によって元の位置に縫合される.歯肉弁の歯槽骨面への圧迫を十分に行い,術後疼痛の原因になる気泡の形成がないようにする.サージカルパックによって歯肉弁を歯槽骨に圧迫保持する.
抜糸,サージカルパックの除去は術後3〜4日に行う.歯牙移動は通法に従って行うが,比較的に強い矯正力を用いて,調整の間隔を短くして行う.
   
治療結果
顔貌所見   側貌では頤部の位置的変化は認められたが,上下唇の前後的位置関係は上唇で2.0mm,下唇で1.0mmの 後退が認められた.上下唇の前突度は改善された.
口腔内所見   オーバージェットは+2.5mm,オーバーバイトは+2 . 0 m m となり,大臼歯の咬合関係は上顎だけの抜歯で終わったためアングルU級で完了している.下顎切歯が1歯先天欠如のいわゆる3incisorsのために,犬歯および臼歯関係は理想的なカスプ・フォッサ関係とは認められない.
パノラマX線写真   歯牙および歯周硬組織にとくに異常は認められない.上下顎智歯は治療中に抜歯されている.
頭部X線規格写真分析所見   骨格系では上下顎の前後的位置関係に変化はとくに認められない.上顎前歯部の舌側移動に伴う上顎歯槽部の舌側方向への形態的変化は大きい.下顎の後下方への開大がわずかに認められる.歯系では上顎切歯の舌側移動が認められ,下顎前歯と臼歯は遠心にやや直立している.
 
      頭部X線規格写真 (動的治療完了時).
      パノラマX線写真 (動的治療完了時).
 
    側貌頭部X線規格写真.
飯塚,石川の方法により
日本人成人の平均値をもとに 分析した.
赤:術前(21歳7か月)
青:術後(22歳9か月)
 
治療前後の頭部X線規格写真の 重ね合わせ. 重ね合わせはS-N平面を基準 とした.
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