1)両側(舌側および唇側)からのアプローチ(図9-1〜5)
(1) 個々の歯牙移動についてはアーチの外側と内側の両側から矯正力を加えたほうが,捻転などが起こりにくく,確実に歯牙移動が可能になる.ただし,外観に触れるなどの問題点もある.
(2) 舌側にブラケットが装着不可能な場合,部分的に唇側にブラケットを装着し,歯牙移動を行うことがある.
(3) 下顎第二大臼歯の舌側への傾斜を防止し,操作性を向上させるために第二大臼歯の装置を側に装着し,第一大臼歯の側チューブとをセクショナルワイヤーで連結する.これをクロスオーバーテクニック(Cross over technique)という.
図9-1 舌側にブラケットの装着ができない歯牙の整直.
図9-2 舌両面からの歯牙移動.
図9-3 頬側および舌側の両側からの大臼歯遠心移動.
図9-4 頬側へのブラケット装着は,犬歯まで延長すべきであるが,審美性を考慮して第二小臼歯だけにした.
図9-5 クロスオーバーテクニック.
2)結紮の術
舌側矯正においては舌側方向の矯正力に対して,スロットからワイヤーが抜け出してきやすいので,いわゆるダブルオーバータイ(Double over tie) を用いるほうがよい.
今後は結紮の必要のない,いわゆるセルフロッキングシステムが多用されることになると思われる.
図9-6 (1) ダブルオーバータイの術式.
図9-7 (2) ワイヤーの挿入前にあらかじめエラスティックは装備しておく.
図9-8 (3)
図9-9 (4)
図9-10 結紮の必要のない,セルフロッキングシステムを持った臼歯用ブラケット.
図9-11
3) 抜歯部位のカモフラージュ
抜歯部位が外観に触れないようにするため,既成テンポラリークラウンあるいは光重合レジンを犬歯の遠心面または小臼歯の近心面に接着する.
図9-12, 13 抜歯部位のカモフラージュ.
4)スペースメーキングの為のエナメル質削合( Interproximal EnamelReduction as Space-Gaining System)
マイナーな叢生(Crowding)、上顎と下顎前歯の歯間幅径の調和、抜歯と非抜歯のボーダーライン症例等の解決法として歯牙サイズを小さくしてスペース(空隙)を得るためのエナメル質削合は矯正治療の有効な術式である.以下、Sheridan等によるエナメル質削合の原則を列記する.
a)エナメル質削合の原則
1)矯正装置を装着してからエナメル質削合を行う.
2)エナメル質の削除量を予め計算する.
3)捻転歯は削合しない.
4)全顎的削合を行う場合は臼歯から削合して前歯部に移行する.
5)適切な器具を使用する.
6)軟組織に傷害を与えない防御法を必ず施す,
7)エナメル質の削除量を特定する.
削除量についての研究結果を以下に示す.
0.5mm(下顎前歯) (Barrer)
0.25 to 0.37mm (Paskow)
0.20 to 0.25mm(前歯)0.35mm(犬歯)(Hudon)
0.3mm(下顎前歯)0.4mm(下顎犬歯) (Tuverson)
0.25mm(前歯)0.8mm(臼歯部) (Sheridan)
0.25mm (Alexander)
0.3mm(前歯)0.6mm(臼歯) (Fillion)
図9-14 ダイヤモンドバーによるエナメル質削合.
図9-15 エナメル質削合用ダイヤモンドバー前歯用(左),臼歯用(右)[DIA BURS,
マニー(株)].
図9-16 前歯叢生症例.
図9-17 エナメル質削合による叢生の改善.(Sheridan JJ. Air-rotor stripping update. J. Clin. Orthod.1987;21:781-788 より引用)
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